※2026年7月15日追記
第175回芥川賞・直木賞の受賞作が発表されました。
この記事では、2026年上半期・第175回の受賞作品と作家名を冒頭に追記し、あわせて候補作一覧、選考会の日程、選考委員、そして候補作を読む楽しみも整理しています。
受賞作から読むのもいいですし、候補作へ戻って読み比べてみるのも、文学賞ならではの楽しみなんですよね。
気になる一冊から、そっと手に取るきっかけになればうれしいです。
第175回芥川賞・直木賞、2026年上半期の候補作が発表されました。
文学賞の候補作が並ぶ季節になると、少しそわそわしますよね。
もう気になっている作家さんの名前を見つけた方もいると思いますし、今回初めて知る作品に出会った方もいるかもしれません。
芥川賞は、いまの文学の空気にふれるような作品が多く、直木賞は、物語としてじっくり読ませてくれる作品が並びます。
この記事では、第175回芥川賞・直木賞の候補作一覧、作者名、掲載誌や出版社、選考会の日程、選考委員、そして候補作を読む楽しみについて整理していきます。
どの作品から読もうかな、と迷っている方の小さな入口になればうれしいです。
※候補作・選考会日程などは、公開時点の情報をもとにまとめています。最新情報は日本文学振興会の公式発表もあわせてご確認ください。
第175回 受賞作 2026年7月15日発表
第175回芥川賞・直木賞の受賞作が決定しました。
ここでは、まず「受賞作・作家」を先にまとめておきますね。
候補作の一覧や読みどころは、この下でそのまま読めます。
第175回芥川賞 受賞作/作家
受賞作:『ゾンビ回収婦』
作家:小砂川チトさん
📌 まず何を読めばいい?
→ 迷ったら、まずは受賞作からで大丈夫です。
候補作の中から選ばれた一作には、その回の文学の空気がぎゅっと宿っているんですよね。
第175回直木賞 受賞作/作家
受賞作:『けんぐゎい』
作家:朝倉かすみさん
📌 直木賞から読みたい方へ
→ 物語にしっかり浸りたい方は、直木賞の受賞作から入るのがおすすめです。
読みやすさだけではなく、いまの時代を物語として受け止める力に触れられるかもしれません。
第175回 芥川賞・直木賞2026上半期の基本情報
芥川賞・直木賞は、年に2回発表される文学賞です。今回の第175回は、2026年上半期の作品が対象になります。
候補作が発表されると、「どの作品が選ばれるのかな」という楽しみはもちろん、まだ知らなかった作家さんや作品に出会えるきっかけにもなりますよね。
まずは、今回の候補作発表日や選考会の日程、芥川賞と直木賞の違いを、簡単に整理しておきます。
| 項目 | 内容 |
| 回 | 第175回 |
| 対象 | 2026年上半期 |
| 候補作発表 | 2026年6月11日 |
| 選考会 | 2026年7月15日予定 |
| 芥川賞 | 純文学の中・短編作品が中心 |
| 直木賞 | 物語性のある長編・短編集が中心 |
受賞作
芥川賞:『ゾンビ回収婦』/直木賞:『けんぐゎい』
芥川賞と直木賞は、どちらも日本の文学賞としてよく知られています。
ただ、名前は知っていても、違いまでは少しあいまい、という方もいるかもしれません。
ざっくり言うと、芥川賞は純文学の新しい書き手や作品に光が当たりやすい賞です。
雑誌に掲載された中・短編作品が候補になることも多く、単行本になる前の作品に触れられる楽しみがあります。
一方の直木賞は、物語としての読み応えがある長編小説や短編集が中心です。すでに単行本として刊行されている作品が多いので、候補作発表後に手に取りやすいのも魅力ですね。
文学賞の記事を読んでいると、「芥川賞と直木賞、どちらから読めばいいんだろう」と迷うことがありますよね。
そんなときは、先に純文学と大衆文学の違いを知っておくと、候補作の選び方が少し楽になります。
言葉の余韻をじっくり味わいたいのか、物語に深く入り込みたいのか。そこが見えてくると、今の自分に合う一冊も選びやすくなるんです。
→ 芥川賞・直木賞を読む前に知っておきたい純文学と大衆文学の違い
第175回 芥川賞候補作品一覧【2026年上半期】
第175回芥川龍之介賞の候補作は、以下の5作品です。
※受賞作には「受賞」と記載しています。候補作として並んだ作品も、それぞれに違った読みどころがありますので、受賞作を読んだあとに戻ってみるのもおすすめです。
【受賞】いまの文学の空気を感じたい方に、まず手に取ってほしい一作です。
| 候補者名 | 候補作 | 掲載誌 | 読みどころ |
| 小砂川チト | 【受賞】「ゾンビ回収婦」 | 群像5月号 | 不穏さとユーモアが交差する、少しざわざわする読書になりそうです。 |
| 鈴木涼美 | 「悪い血」 | 文學界6月号 | 身体、血、幸福と不幸のあわいにある感覚をたどる作品として気になります。 |
| 仁科斂 | 「丹心」 | 新潮4月号 | 中国を背景に、建築や土地、言葉の境界が重なっていく作品です。 |
| 村司侑 | 「ソリティアおじさんがいた頃」 | 文學界5月号 | 忘れていた人や時間が、静かに浮かび上がってくるような作品です。 |
| 八木詠美 | 「アンチ・グッドモーニング」 | 文藝春季号 | 朝の明るさにうまく乗れない感覚を思わせるタイトルが印象的です。 |
芥川賞候補作は、掲載誌で読む形になる作品が多いです。
単行本になる前の作品を読むのは、少し特別な感じがしますよね。
まだ本屋さんの棚に大きく並ぶ前の、文学の芽のようなものに触れる時間でもあるのかなと思います。
第175回 直木賞候補作品一覧【2026年上半期】
第175回直木三十五賞の候補作は、以下の5作品です。
※受賞作には「受賞」と記載しています。候補作として並んだ作品も、それぞれに違った読みどころがありますので、受賞作を読んだあとに戻ってみるのもおすすめです。
【受賞】いまの文学の空気を感じたい方に、まず手に取ってほしい一作です。
| 候補者名 | 候補作 | 出版社 | 読みどころ |
| 朝倉かすみ | 【受賞】『けんぐゎい』 | 光文社 | 江戸を舞台に、女性たちの生と尊厳を描く時代小説です。 |
| 蝉谷めぐ実 | 『見えるか保己一』 | KADOKAWA | 全盲の国学者・塙保己一の人生を描く歴史小説です。 |
| 凪良ゆう | 『多類婚姻譚』 | 講談社 | 結婚や愛のかたちを、いまの感覚で見つめる作品です。 |
| 原田ひ香 | 『#台所のあるところ』 | 文藝春秋 | 台所を通して、暮らしと人生を描く連作小説です。 |
| 若林正恭 | 『青天』 | 文藝春秋 | アメフトに打ち込む高校生を描いた青春小説です。 |
直木賞候補作は、すでに単行本として手に取りやすい作品が並んでいます。
気になる作家さんから読むのもいいですし、テーマで選ぶのも楽しいです。
「いまの自分は、どんな物語を読みたいんだろう」と考えながら眺めるだけでも、候補作一覧はちょっとした読書地図になるんですよね。
第175回 芥川賞候補作の読みどころ
芥川賞候補作は、物語のわかりやすさだけではなく、言葉の手ざわりや、日常の中にある違和感に触れるような作品が並びます。
今回の候補作も、タイトルだけで心にひっかかるものが多いですよね。
まだ単行本化前の作品は掲載誌で読む形になりますが、それもまた、候補作発表直後ならではの楽しみです。
いま書かれている文学の空気に、少し早く触れてみるような気持ちで読んでみると、作品との距離が近くなるかもしれません。
小砂川チト「ゾンビ回収婦」|第175回芥川賞受賞作
「ゾンビ回収婦」は、『群像』2026年5月号に掲載された作品です。
タイトルだけでも、かなり引きがありますよね。
「ゾンビ」と「回収婦」という言葉の組み合わせからは、不穏さも、働くことの気配も、どこか奇妙なユーモアも感じます。
小砂川チトさんの作品には、現実のすぐ隣にある違和感を、少しずつこちら側へ引き寄せてくるような力があります。
この作品も、ただ奇抜な設定を楽しむというより、私たちが普段あまり見ないようにしているもの、社会の中で見えにくくされているものに触れる読書になるのかもしれません。
少しざわざわする小説が好きな方、現実と非現実の境目がゆらぐ作品に惹かれる方に合いそうです。
「ゾンビ回収婦」が気になった方は、小砂川チトさんのこれまでの作品もあわせて知っておくと、より作品世界に入りやすくなると思います。
デビュー作「家庭用安心坑夫」や、芥川賞候補にもなった「猿の戴冠式」、文庫新刊の情報までこちらで整理しています。
不穏で、でも目をそらせない小砂川作品を、どこから読むか迷ったときの入口にしてみてくださいね。
鈴木涼美「悪い血」|第175回芥川賞候補作
「悪い血」は、『文學界』2026年6月号に掲載された作品です。
「悪い血」という題名には、少しひっかかるものがあります。
血という言葉は、身体のことでもあり、家族や血縁のことでもあり、自分では選べなかったものの象徴のようにも感じられます。
鈴木涼美さんの作品には、身体、欲望、まなざし、そして自分自身をどう扱って生きるのかという切実さが流れている印象があります。
幸福とも不幸とも言い切れない人生。そこにあるざらつきや、簡単にはほどけない感情が、この作品にもにじんでいるのかもしれません。
明るく励ましてくれる小説ではなく、言葉にしにくい痛みにそっと触れるような作品を読みたい方に向いていそうです。
「悪い血」が気になった方は、鈴木涼美さん自身の歩みも少し知っておくと、作品の奥にある言葉がより近く感じられるかもしれません。
鈴木涼美さんは、慶應義塾大学から東京大学大学院へ進み、日本経済新聞社勤務を経て文筆の世界へ入った作家さんです。結婚や出産などの公表情報も含めて見ていくと、身体、家族、社会の視線を書き続けてきた人としての輪郭が少しずつ見えてきます。
鈴木涼美さんの結婚相手や子供、学歴・経歴、そして芥川賞候補作「悪い血」については、こちらでやわらかく整理しています。
※文芸誌は売り切れになる場合がございます。
仁科斂「丹心」|第175回芥川賞候補作
「丹心」は、『新潮』2026年4月号に掲載された作品です。
中国を背景に、建築や土地、資本、人と人の関係が重なっていく作品として紹介されています。
建築をめぐる小説は、建物そのものだけでなく、その土地に積み重なった時間や、そこに関わる人たちの欲望まで浮かび上がらせることがあります。
仁科斂さんは、複数の国や言葉の間で育ってきた経歴を持つ作家さんです。だからこそ、ひとつの場所にきれいに収まりきらない感覚が、作品の中にも流れているのかもしれません。
海外を舞台にした文学が好きな方や、個人の感情と社会の大きな動きが交差する小説を読みたい方に合いそうです。
「丹心」が気になった方は、仁科斂さん自身のことも少し知っておくと、作品の入口がやわらかく開くかもしれません。
仁科斂さんは、香港・上海・ロンドンで育ち、哲学や翻訳にも関わりながら、日本語で小説を書いている作家さんです。名前の読み方やプロフィールを知ると、『丹心』に流れている異国の空気や、言葉との距離感も少し近く感じられると思います。
芥川賞候補作「丹心」や、デビュー作「さびしさは一個の廃墟」についても、こちらでやさしく整理しています。
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村司侑「ソリティアおじさんがいた頃」|第175回芥川賞候補作
「ソリティアおじさんがいた頃」は、『文學界』2026年5月号に掲載された作品です。
第131回文學界新人賞の受賞作でもあります。
タイトルにある「ソリティアおじさん」という言葉が、なんとも忘れがたいんですよね。
職場にいた人。よく知っていたわけではないけれど、確かにそこにいた人。けれど、いつの間にか記憶の中で薄くなっていた人。
そういう存在って、誰の人生にも少しはあるのかもしれません。
大きな事件ではなく、誰かの死をきっかけに、忘れていた時間や確かめようのない記憶が浮かび上がる。そんな静かな小説として読めそうです。
過去の職場や、もう戻れない時間を思い出すような作品が好きな方に合うかもしれません。
「ソリティアおじさんがいた頃」というタイトルに、少し立ち止まった方もいるかもしれません。
村司侑さんは、九州大学文学部を卒業し、第131回文學界新人賞を受賞したあと、同作で第175回芥川賞候補に選ばれた作家さんです。
まだ公表情報は多くありませんが、出身や学歴、経歴を知ると、この作品に流れている職場の記憶や、過ぎていった時間の手ざわりも少し近く感じられると思います。
村司侑さんのプロフィールと「ソリティアおじさんがいた頃」の読みどころはこちらで整理しています。
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八木詠美「アンチ・グッドモーニング」|第175回芥川賞候補作
「アンチ・グッドモーニング」は、『文藝』2026年春季号に掲載された作品です。
タイトルがとても印象的です。
「グッドモーニング」に対して「アンチ」とつくことで、朝の明るさや前向きさに、少しだけ距離を置くような響きがあります。
朝が来ることを、いつもまっすぐ喜べるわけではないんですよね。
ちゃんと起きて、ちゃんと始めて、ちゃんと明るく振る舞う。
そういう空気にうまく乗れない日もあります。
八木詠美さんは、日常の中にある違和感や、社会の当たり前にうまくなじめない感覚を、すっと言葉にしてくれる作家さんという印象があります。
「おはよう」と言う前の、まだ名前のついていない気持ちに触れたい方に合いそうです。
『アンチ・グッドモーニング』というタイトルに、少し引っかかりを覚えた方もいるかもしれません。
八木詠美さんは、『空芯手帳』で太宰治賞を受賞し、『休館日の彼女たち』や『ガマズミの花』でも、日常の中にある小さな違和感を、少し不思議な形で描いてきた作家さんです。
高校や経歴、これまでの書籍を知っておくと、『アンチ・グッドモーニング』に流れている“明るさへの違和感”も、より近く感じられると思います。
八木詠美さんのプロフィールと、芥川賞候補作『アンチ・グッドモーニング』の読みどころはこちらで整理しています。
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第175回 直木賞候補作の読みどころ
直木賞候補作は、物語としての読み応えがあり、登場人物の人生や時代の空気にじっくり浸れる作品が並びます。
今回は、時代小説、歴史小説、結婚や愛の物語、台所をめぐる暮らしの小説、青春小説と、入口の違う5作品がそろいました。
どれから読めばいいか迷ったときは、まず「いまの自分がどんな物語に触れたいか」で選んでみるのがいいと思います。
受賞作を予想しながら読むのも楽しいですし、結果とは別に、自分の心に残る一冊を見つける時間にもなります。
※受賞作には「受賞」と記載しています。候補作として並んだ作品も、それぞれに違った読みどころがありますので、受賞作を読んだあとに戻ってみるのもおすすめです。
【受賞】いまの文学の空気を感じたい方に、まず手に取ってほしい一作です。
朝倉かすみ『けんぐゎい』|第175回直木賞受賞作
『けんぐゎい』は、光文社から刊行された時代小説です。
江戸を舞台に、女性たちの生と尊厳を描く作品として紹介されています。
時代小説というと、少し遠い世界の話のように感じる方もいるかもしれません。
でも、女性の身体や見た目、生き方に向けられるまなざしは、今の時代にもつながっているものがあります。
昔の物語を読んでいるはずなのに、ふと現代の自分たちのことを考えてしまう。そういう読書になるかもしれません。
朝倉かすみさんの、人間を見つめるまなざしが好きな方。静かだけれど芯のある女性たちの物語を読みたい方に、手に取ってみてほしい一冊です。
『けんぐゎい』で朝倉かすみさんが気になった方は、過去作から読んでみるのもおすすめです。
大人の恋愛小説として読まれてきた『平場の月』、読書会を描いた『よむよむかたる』、文庫で手に取りやすい作品など、朝倉さんの魅力は一冊だけでは語りきれないんですよね。
はじめて読む方へ向けて、おすすめ作品を10冊にまとめています。
蝉谷めぐ実『見えるか保己一』|第175回直木賞候補作
『見えるか保己一』は、KADOKAWAから刊行された歴史小説です。
主人公は、江戸時代の全盲の国学者・塙保己一。
幼いころに視力を失いながらも、学問へ向かい、『群書類従』という大きな仕事を成し遂げた人物です。
「見える」とは、どういうことなのでしょう。
目で見えることだけが、世界を理解することなのか。
見えていると思っている私たちは、本当に相手を見ているのか。
この作品は、保己一の人生をたどりながら、そんな問いを静かに差し出してくれるのかもしれません。
蝉谷めぐ実さんの濃密な歴史小説が好きな方、人物の内側へ深く入っていく物語を読みたい方に合いそうです。
『見えるか保己一』は、「見えること」と「見えないこと」のあいだにある痛みを描いた作品です。
この物語を書いた蝉谷めぐ実さんが、どんな学びや経歴を経て、江戸や歌舞伎の世界を描く作家になったのか。そこを少し知るだけで、作品に入る扉がやわらかく開くような気がします。
蝉谷めぐ実さんのプロフィールと『見えるか保己一』のあらすじはこちらにまとめました。
凪良ゆう『多類婚姻譚』|第175回直木賞候補作
『多類婚姻譚』は、講談社から刊行された作品です。
凪良ゆうさんは、『流浪の月』『汝、星のごとく』などで、多くの読者に届いてきた作家さんです。
人を好きになること。
一緒に生きること。
家族になること。
それでも、わかり合えないこと。
凪良さんの作品には、近い関係だからこそ生まれる痛みや、世の中の「普通」から少し外れた場所で息をしている人たちの切実さがあります。
『多類婚姻譚』というタイトルからも、結婚や愛のかたちはひとつではないのだと感じます。
誰かを大切に思う気持ちが、必ずしもきれいな形に収まるとは限らない。そんな複雑さごと受け止める読書になりそうです。
『多類婚姻譚』が気になった方は、凪良ゆうさん自身の歩みも少し知っておくと、作品の奥にある問いがより近く感じられるかもしれません。
凪良さんは、『流浪の月』や『汝、星のごとく』などで、世間の正しさだけではすくいきれない人の痛みや、誰かと生きる難しさを描いてきた作家さんです。生い立ちや経歴を知ると、『多類婚姻譚』に流れている「結婚」や「家族」へのまなざしも、少し深く受け取れる気がします。
凪良ゆうさんの学歴・生い立ち・経歴、そして直木賞候補作『多類婚姻譚』については、こちらでやさしく整理しています。
原田ひ香『#台所のあるところ』|第175回直木賞候補作
『#台所のあるところ』は、文藝春秋から刊行された作品です。
台所をめぐる、6つの物語として紹介されています。
台所って、不思議な場所ですよね。
ただ料理をする場所ではなくて、暮らしの癖や、家族との距離、自分をどう扱ってきたかまで、少しずつにじむ場所のように思います。
誰かのために作るごはん。
自分ひとりのために用意する食事。
何も作れない日。
それでも、お湯を沸かすだけの日。
そういう小さな場面にも、その人の人生はちゃんとあります。
原田ひ香さんの作品が好きな方、食べることや暮らすことを通して人の心を見つめる小説が好きな方に、とても合いそうな候補作です。
『#台所のあるところ』で原田ひ香さんが気になった方は、プロフィール記事もあわせてどうぞ。
本名や結婚、夫との帯広時代、作家になるまでの経歴を、公表情報をもとにやさしく整理しています。
若林正恭『青天』|第175回直木賞候補作
『青天』は、文藝春秋から刊行された若林正恭さんの初小説です。
アメフトに打ち込む高校生を描いた青春小説として紹介されています。
若林正恭さんの名前を見て、まず驚いた方もいるかもしれません。
けれど、候補作として向き合うなら、やはり一冊の小説として読んでみたいですよね。
青春小説には、まぶしさだけではなく、焦りや不器用さもあります。
何者かになりたいのに、なれない。
本気でやりたいのに、うまくいかない。
悔しさだけが、身体の中に残る。
学生時代の物語でありながら、大人になってから読むと、また違う痛みが返ってくることがあります。
熱のある物語を読みたい方、青春のきれいごとではない部分に触れたい方に合いそうです。
若林正恭さんの『青天』が気になった方は、作品の背景にある高校時代や学歴も少し知っておくと、物語の見え方が変わるかもしれません。
『青天』は、高校アメフト部を舞台にした青春小説です。若林さん自身も日本大学第二高等学校でアメリカンフットボール部に所属し、東洋大学文学部へ進んだ方なので、その歩みを知ると、作品に流れている負けたあとの痛みや、不器用な時間が少し近く感じられると思います。
若林正恭さんの学歴や高校時代、直木賞候補作『青天』のあらすじはこちらで整理しています。
どの候補作から読む?迷ったときの選び方

候補作が一気に並ぶと、どれから読めばいいのか迷いますよね。
文学賞の候補作となると、「ちゃんと読まなきゃ」と少し構えてしまう方もいるかもしれません。
でも、最初の一冊はもっと気軽で大丈夫だと思います。
作家名で選んでもいいですし、タイトルに惹かれてもいい。
テーマがいまの自分に近い、という理由でも十分です。
文学賞は、正解を当てるためだけのものではなく、自分では出会わなかった本に出会うための入口でもあるんですよね。
芥川賞候補から読みたい方へ
芥川賞候補作は、掲載誌で読む作品が多くなります。
少しハードルが高く感じるかもしれませんが、雑誌で読む文学には、その号の空気ごと味わえる楽しさがあります。
| 読みたい気分 | 候補作 |
| 不穏さとユーモアを味わいたい | 【受賞】小砂川チト「ゾンビ回収婦」 |
| 身体や血の感覚をめぐる作品を読みたい | 鈴木涼美「悪い血」 |
| 海外・社会・建築が絡む作品を読みたい | 仁科斂「丹心」 |
| 記憶や職場の時間に触れたい | 村司侑「ソリティアおじさんがいた頃」 |
| 日常の明るさに対する違和感を読みたい | 八木詠美「アンチ・グッドモーニング」 |
純文学は、わかりやすい答えをくれるというより、まだ言葉になっていない気持ちのそばに立ってくれることがあります。
少し立ち止まりたいときに、芥川賞候補作から読んでみるのもいいかもしれません。
直木賞候補から読みたい方へ
直木賞候補作は、単行本として読みやすい作品が多いです。
物語にしっかり浸りたい方や、読み応えのある一冊を探している方は、直木賞候補から入るのが自然かもしれません。
| 読みたい気分 | 候補作 |
| 女性の生を描く時代小説を読みたい | 【受賞】朝倉かすみ『けんぐゎい』 |
| 歴史上の人物の人生に深く触れたい | 蝉谷めぐ実『見えるか保己一』 |
| 結婚や愛のかたちを考えたい | 凪良ゆう『多類婚姻譚』 |
| 暮らしと人生の物語を読みたい | 原田ひ香『#台所のあるところ』 |
| 青春の焦りや熱を読みたい | 若林正恭『青天』 |
気になる作品があれば、まずは試し読みで雰囲気を見てみるのもいいと思います。
本は、最初の数ページで「あ、いま読みたいのはこれかもしれない」とわかることがありますから。
直木賞候補作をきっかけに朝倉かすみさんを知った方の中には、『平場の月』が気になっている方も多いかもしれません。
『平場の月』は、50代の男女の再会を描いた、大人の恋愛小説です。
映画化をきっかけに原作へ戻る方も増えています。
タイトルにある「平場」の意味や、読み終えたあとに次に手に取りたい朝倉作品も、こちらでやわらかく整理しています。
第175回 芥川賞・直木賞の選考委員

第175回の選考に関わる選考委員は、以下の方々です。
芥川賞の選考委員
小川洋子さん、奥泉光さん、川上弘美さん、川上未映子さん、島田雅彦さん、平野啓一郎さん、松浦寿輝さん、山田詠美さん、吉田修一さん。
直木賞の選考委員
浅田次郎さん、角田光代さん、京極夏彦さん、桐野夏生さん、辻村深月さん、林真理子さん、三浦しをんさん、宮部みゆきさん、米澤穂信さん。
選考委員の顔ぶれを見ると、作品がどんな視点から読まれるのかを想像する楽しみもあります。
でも、読者としては、あまり難しく考えすぎなくても大丈夫です。
まずは、自分の心がどの作品に動くのか。
そこから読んでみるのが、いちばん自然な入り方だと思います。
候補作を受賞発表前に読む楽しみ

芥川賞・直木賞は、受賞作が決まってから読むのももちろん楽しいです。
でも、候補作の段階で読むことにも、また別のよさがあります。
まだ結果が出ていないうちに読むと、「どの作品が選ばれるか」よりも先に、自分自身の感覚で作品に向き合えるんです。
この作品が好きだな。
このテーマが気になるな。
選ばれるかどうかはわからないけれど、読んでよかったな。
そういう気持ちは、賞の結果とは別に、ちゃんと自分の読書として残ります。
文学賞は、作品を順位づけるためだけのものではなく、まだ出会っていなかった本への入口でもあるんですよね。
候補作を読む時間は、少し未来の文学に先に触れるような時間なのかもしれません。
Kindle・Audibleで読む前に確認したいこと

候補作を読みたいと思ったら、まずは紙の本、Kindle版、Audible版があるかを確認してみると選びやすいです。
直木賞候補作は単行本として刊行されているため、Amazonなどで作品名を検索すると、紙の本や電子書籍の有無を確認しやすいと思います。
芥川賞候補作は、単行本化前の場合、掲載誌で読む形になることがあります。
文芸誌の紙版や電子版があるかを見てみると、発表直後の空気に近い形で作品に触れられます。
また、耳で物語に入りたい方は、Audibleで作品名や著者名を検索してみるのもいいですね。
とくに歴史小説や長編小説は、耳で聴くことで人物の声や場面が立ち上がりやすいこともあります。
ただし、すべての候補作がKindle UnlimitedやAudibleの対象になっているとは限りません。
気になる作品があれば、購入前に対象サービスや価格を確認してみてくださいね。
Kindle UnlimitedやAudibleも、読み方の選択肢に

受賞作や候補作は、紙の本でじっくり読むのもいいですし、Kindleで気軽に読み始めるのも合います。
文芸誌掲載作はタイミングによって入手しにくいこともあるので、気になる作品はAmazonや電子書籍で在庫・配信状況を確認してみてくださいね。
耳から物語に入りたい方は、Audibleで関連作や過去の受賞作を探してみるのもひとつの方法です。
目が疲れている日でも、本の世界に少し近づけるのが、音声読書のいいところなんですよね。
Kindle Unlimitedの対象作品を探したい方は、こちらの記事で使い方を整理しています。
→ Amazon Kindle Unlimitedとは?料金・解約・使い方を初心者向けに解説
家事や移動中に本を楽しみたい方は、Audibleの使い方もあわせて見ておくと選びやすくなります。→ Amazonオーディブル無料体験の始め方|期間・登録方法・解約手順をやさしく解説
芥川賞・直木賞の違いや、歴代受賞作をもっとまとめて見たい方はこちらもどうぞ。
▶芥川賞・直木賞 歴代受賞作と候補作一覧|違い・最新回も解説
まとめ|第175回芥川賞・直木賞候補作から、いま読みたい一冊を
2026年上半期・第175回の芥川賞/直木賞は、2026年7月15日に受賞作が発表されました。
候補作が並んでいたときのそわそわした時間を経て、選ばれた作品が見えてくると、その回の文学賞の輪郭が少しはっきりしてきますね。
迷ったら、まずは受賞作からで大丈夫です。
選考を通って選ばれた一冊には、いま多くの人に読まれていく理由がきっとあります。
そして、受賞作を読んだあとに候補作へ戻ると、「なぜこの作品が選ばれたのか」「ほかの作品は何を描いていたのか」という読み比べも楽しめます。
文学賞は、結果だけを見るものではなく、そこから自分の読書を広げていける入口でもあるんですよね。
気になる一冊から、そっとページを開いてみてくださいね。


