こんにちは、松風知里です。
「最近の文学賞って、どんな作品が選ばれているんだろう?」と思ったことはありませんか?
今回は、大阪の作家・織田作之助の精神を受け継ぐ「織田作之助賞」の歴代受賞作の中から、心にじんわり残る10冊を、やさしくご紹介していきますね。
織田作之助賞は、暮らしのなかの哀しみやあたたかさ、庶民の人生模様を丁寧に描いた作品に贈られる賞です。
派手さはなくても、「ああ、わかるなあ」と思えるような物語が揃っているんです。
日々の生活にちょっと疲れてしまったとき、少し心を立て直したいとき──そんなときにそっと寄り添ってくれる本との出会いが、ここにあるかもしれません。
織田作之助賞とは?──“庶民の文学”を今に伝える賞
織田作之助賞は、1983年に大阪文学振興会や関西大学、毎日新聞社によって創設されました。
若くして亡くなった作家・織田作之助。
その作品に流れるのは、人間の弱さ、哀しさ、でもどこかユーモラスであたたかい視線。
そんな織田作之助の文学の灯を今につなぐために、この賞は生まれたんですね。
商業的な派手さよりも、じっくりと人間の内面や社会を見つめた作品が選ばれるのが特徴です。
織田作之助賞はどんな作品が選ばれるの?──共通するテーマをひもといて
織田作之助賞の受賞作には、いくつか共通した「やさしさの軸」があるんです。
- 社会の片隅で生きる人々の姿
- 誰もが抱える心の揺れや迷い
- 大きな事件ではなく、小さな感情の物語
そんな物語が、読む人の心にそっと触れてくる。
まるで生活の中に咲いた野の花のような、静かな強さを持っています。
▶織田作之助賞の由来となった作家・織田作之助の生涯や作品、無頼派との関係を知っておくと、受賞作の理解も深まりますよ。
織田作之助とは?代表作・無頼派・文学賞までまるっとわかる総まとめ
織田作之助賞歴代受賞作品この10作を選んだ理由──“今のあなた”に届くように
ご紹介する10作品は、「今読みたい」と思ってもらえることを大切に選びました。
- 初めて文学賞作品を読む人でも読みやすいこと
- 登場人物の感情が丁寧に描かれていて、共感しやすいこと
- 織田作之助の“庶民を見つめるまなざし”が感じられること
一つでも気になるタイトルがあったら、ぜひ読んでみてくださいね。
織田作之助賞の歴代受賞作品から見るおすすめ受賞作10選
織田作之助賞の歴代受賞作品から見るおすすめ歴代受賞作品10選のご紹介です。
魅力的な歴代受賞作品の多い織田作之助賞ですが、その中から特におすすめの作品を選びましたので、今後の読書の参考になさってくださいね!
その街の今は/柴崎友香
第23回(2006年)織田作之助賞受賞作品
変わっていく街の風景のなかで、自分はどこへ向かっているのか──そんな想いを抱いたことのある方へ。
柴崎友香さんの『その街の今は』は、大阪・心斎橋の通りを舞台に、28歳の歌ちゃんが紡ぐ静かな日常を描いた物語です。
大きな事件は起こりません。
けれど、カフェで働きながら年下の青年と出会い、古い写真を眺める──そんな何気ない日々のなかに、過去と今、街と心が重なる瞬間が丁寧に描かれているんです。
第23回織田作之助賞を受賞した本作は、「何も起きないようでいて、実はたくさんの気づきがある」そんな新しい人情小説。
もし今、日々の暮らしに少しの違和感や息苦しさを感じていたら、この本をそっと開いてみてください。
あなたの足元にある風景が、きっと少し違って見えるようになりますよ。
通天閣/西加奈子
第24回(2007年)織田作之助賞受賞作品
しょーもない日々が続いて、ふと心がくたびれてしまうことってありませんか?
西加奈子さんの『通天閣』は、そんな毎日の片隅にそっと灯る、希望の光を描いた物語なんです。
大阪・新世界の下町を舞台に、孤独を抱えた男女が交わることなく、それぞれの人生を生きていく──でも、通天閣のように、そこには小さく確かな再生の光があるんですよね。
第24回織田作之助賞を受賞したこの作品は、甘さを排した硬質な筆致で、現代の大阪を鋭く映し出しています。
もし今、毎日がしんどいと感じていたら、ぜひこの物語を開いてみてください。
きっとあなたの心にも、ささやかな灯がともります。
ワーカーズ・ダイジェスト/津村記久子
第28回(2011年)織田作之助賞受賞作品
「仕事も人生も、思い通りにはいかないなぁ…」そんな風に感じる日、ありますよね。
『ワーカーズ・ダイジェスト』は、大阪と東京、それぞれの街で働く男女の一年を静かに描いた物語。
顔を合わせることはほとんどなくても、ふとした瞬間に相手の存在が心を支えてくれる──そんな不思議な関係に、きっとあなたも共感できるはずです。
第28回織田作之助賞を受賞したこの作品は、現代社会に生きる私たちのリアルな感情や葛藤を、やさしく、でもしっかりと描いています。
「がんばらなきゃ」と背伸びする日々に疲れたとき、そっと読んでみてくださいね。
ページをめくるごとに、誰かとつながっている温かさを、きっと感じられると思います。
工場/小山田浩子
第30回(2013年)織田作之助賞受賞作品
「働くって、こんなにも不思議で、こんなにも孤独」──そんなふうに感じたこと、ありませんか?
『工場』は、何を作っているのかすら分からない巨大な工場を舞台に、単調な作業を繰り返す人々の日常を描いた物語です。
書類をひたすら捨てる女性、謎の赤入れ作業に没頭する兄、屋上のコケを探す青年。
どこかちぐはぐな仕事風景に、読んでいるこちらもふっと胸がざわめきます。
でもこの小説、ただの不条理劇じゃないんです。
織田作之助賞を受賞した理由は、「働くこと」の意味や、社会のゆがみをユニークで繊細に描いた筆力にあります。
もしあなたが、「今の生活、このままでいいのかな」と立ち止まる瞬間があるなら、この一冊がそっと隣に座ってくれるかもしれません。
『工場』は、あなたの中の違和感や孤独感に、静かに光を当ててくれる物語です。
目の前の世界がちょっと変わって見える、そんな読書時間を過ごしてみませんか?
世界でいちばん美しい/藤谷治
第31回(2014年)織田作之助賞受賞作品
「あなたの“せった君”は、誰ですか?」──藤谷治さんの小説『世界でいちばん美しい』は、天才音楽家・雪踏文彦と、彼に魅せられた語り手の人生を通して、「人はなぜ生きるのか」をそっと問いかけてくる物語です。
圧倒的な才能を前にしたときの羨望や諦め、でもそれでも続いていく日々。
そうした感情にやさしく寄り添いながら、人との絆や、生きることの意味を深く考えさせてくれる一冊なんです。
人生の転機や喪失を経験したとき、特別じゃない自分に自信が持てないとき──そんなときにこの物語が、きっと心の奥に灯をともしてくれます。
静かな時間に、そっと手に取ってみてくださいね。
浪華古本屋騒動記/堂垣園江
第32回(2015年)織田作之助賞受賞作品
大阪の街を歩いていると、どこか懐かしくて、あたたかい気持ちになることってありませんか?
『浪華古本屋騒動記』は、そんな浪速の風情と、本への愛がぎゅっと詰まった物語なんです。
時代に押され気味の古本屋たちが、古地図を手に“お宝”を探して街を駆け巡る──それは単なる宝探しじゃなく、仲間との絆や歴史との対話でもあるんですね。
第32回織田作之助賞を受賞した本作は、笑いと人情、そして知恵が詰まった一冊。
時代の流れに迷ったときこそ、大切なつながりや小さな挑戦が、心を前に進めてくれるのかもしれません。
本と人、街と想いが交差するこの物語に、あなたもそっと飛び込んでみませんか?
あの家に暮らす四人の女/三浦しをん
第32回(2015年)織田作之助賞受賞作品
東京・杉並の洋館で、少し不器用な4人の女性たちが紡ぐ、静かであたたかな日々。
三浦しをんさんの『あの家に暮らす四人の女』は、家族でも友達でもない“ゆるやかなつながり”が、孤独や不安をやさしくほどいていく物語です。
現代女性のリアルな心の揺れや、どこか寂しい日常の中で見つけるささやかな幸せが、そっと心に沁みてきます。
織田作之助賞を受賞した本作は、まさに「居場所」を求めるすべての人に届けたい一冊。
もし、今あなたがちょっと疲れていたなら、この物語の扉を静かに開いてみてくださいね。
その話は今日はやめておきましょう/井上荒野
第35回(2018年)織田作之助賞受賞作品
ある日突然、いつもの日常が、少しだけきしむような音を立てて揺らぎはじめたら──そんな経験、ありませんか?
『その話は今日はやめておきましょう』は、定年後の穏やかな生活を送る夫婦に起きた、小さな変化の物語です。
家に出入りするようになった青年の存在が、ゆり子の胸に違和感を残し、やがて「日常の不穏さ」に気づいていくんですね。
老いとともに変化する夫婦関係。
静かな住宅地に広がる不安の影。
織田作之助賞を受賞した本作は、こうした“見えにくい心の揺れ”を丁寧に描き出しています。
日々の中にある当たり前の尊さと、それを脅かす脆さに、ふと気づかされる一冊。
もし今、家族や人との距離に少し悩んでいるなら──この物語が、あなたの気持ちを静かに受けとめてくれるかもしれません。
どうぞ、ゆっくりと読み進めてみてくださいね。
水平線/滝口悠生
第39回(2022年)織田作之助賞受賞作品
語られなかった記憶が、波のように今を生きる私たちに届く──そんな感覚を味わえる一冊が『水平線』です。
硫黄島をめぐる家族のルーツをたどりながら、戦争と疎開の記憶、現代の兄妹の人生が重なっていく物語なんですよね。
数十人もの視点を行き来しながら、生と死、過去と現在の境界がゆるやかにほどけていく…そんな語りの手法が高く評価され、織田作之助賞を受賞しました。
歴史の中で見過ごされがちな島民の声や、語られなかった家族の想いにふれることができる貴重な読書体験。
静かに、でも深く心に届く物語を、ぜひあなたも感じてみてください。
それは誠/乗代雄介
第40回(2023年)織田作之助賞受賞作品
「誰かに会いたい──」そんな想いが、何気ない日常を冒険に変えることがあるんです。
乗代雄介さんの『それは誠』は、高校生・誠が絶縁していたおじさんに会いに行く小さな旅を描いた物語。
大きな事件は起きません。
でも、心が動くんです。
会いたい気持ちや、心にしまっていた過去への想いが、そっと動き出していくんですね。
織田作之助賞を受賞したこの作品には、淡々とした語りの中に、人とのつながりのあたたかさと、生きる力がにじんでいます。
もし今、誰かとの関係や自分の気持ちに向き合いたいと思っているなら、この一冊がきっとそばに寄り添ってくれますよ。
静かな時間に、そっとページを開いてみてくださいね。
織田作之助賞を電子書籍で読むには?
すぐ読める、が一番やさしい!
「読みたい気持ちはあるけれど、どこで手に入るの?」という方もご安心を。
織田作之助賞の受賞作の中には、Kindleなどの電子書籍で読めるものもあります。スマホやタブレットからすぐ読めて、重たい本を持ち歩く必要もありません。
▶ はじめての方はこちらをご参考に:
Amazon Kindle Unlimitedの使い方・料金・解約方法を徹底解説!初心者向けガイド
▶ 朗読で本を楽しみたい方へ:
Amazonオーディブル完全マニュアル【2025年版】|無料体験期間・メリット・解約手順
※配信作品は変わることがありますので、詳細は各サービスでご確認くださいね。
まとめ|文学はもっと自由で、やさしい
織田作之助賞の歴代受賞作品は、「文学ってちょっと難しそう…」と感じていた方にこそ手に取ってほしい一冊がそろっています。
登場人物たちのちいさな痛みや喜び。
変わらない日常の風景。
その一つひとつが、あなたの心のどこかに重なってくるかもしれません。
「読んでよかったな」「ちょっと気持ちが軽くなった」──そんな出会いが、今日のあなたにも訪れますように!
▶関連記事: