「本を読むとストレスが軽くなる」と聞いたことはありませんか。
仕事や家事、人間関係などで頭がいっぱいのとき、本を開いている間だけ少し気持ちが静かになった。
そんな経験がある方もいるかもしれません。
読書だけですべてのストレスがなくなるわけではありません。
それでも、読書には日常の気がかりから少し距離を置いたり、一つの物語や言葉に意識を向けたりする時間があります。
近年の研究でも、楽しみのための読書とウェルビーイングの関係が調べられています。
この記事では、なぜ読書がストレス解消につながると感じられるのかを、研究でわかっていることとあわせてやさしく考えてみます。
読書がストレス解消につながるのはなぜ?
読書をしていて、気がつくと仕事や悩みごとを考えていなかった。
そんなことがありますよね。
読書がストレス解消につながる理由は、一つではありません。
日常のストレスから意識を少し離せる
小説を読んでいるときは、登場人物や物語の世界へ意識が向きます。
エッセイなら、誰かの経験や考え方に触れることもあります。
その間だけでも、頭の中を占めていた仕事や悩みから距離を置けることがあります。
2025年に発表された「楽しみのための読書」とウェルビーイングに関するレビューでは、43本の研究を検討し、読書が日常のストレス要因から離れる時間や、自己理解、前向きな感情などにつながる可能性が整理されています。
読書によって悩みそのものが解決するわけではありません。
それでも、頭の中をいったん別の場所へ移す時間ができることは、気持ちを切り替えるきっかけになるのでしょう。
一つのことに意識を向ける時間ができる
忙しい日は、いくつものことを同時に考えています。
メールを確認しながら家事をする。
スマホを見ながら次の予定を考える。
そんな時間が続くと、頭が休まらないと感じることもありますよね。
本を読むときは、文字や物語を追うという一つのことへ意識を向けます。
私は、この「一つのことだけをする時間」も、読書の心地よさの一つだと思っています。
自分とは違う世界へ行ける
小説には、自分とは違う時代や土地、人生を生きる人が登場します。
今いる場所から動かなくても、本を開けば別の世界へ行ける。
それだけで、目の前の悩みを少し違う距離から眺められることがあります。
2025年のレビューでも、読書を通して登場人物の視点に触れたり、自分自身や世界について考えたりすることが、ウェルビーイングにつながる仕組みの一つとして挙げられています。
「自分のためだけの時間」になりやすい
本を読む時間には、誰かに返事をする必要もありません。
成果を出す必要もありません。
好きな本を、好きな速さで読む。
それだけです。
特に、毎日誰かのために動いている人にとっては、この何もしなくていい時間そのものが、ほっとできる時間になるのかもしれません。
読書とストレスについて、研究ではどこまでわかっている?
「読書をすると必ずストレスが下がる」と言い切れるほど、単純な話ではありません。
ただし、読書と心理的な負担の軽減との関連を示した研究はあります。
たとえば、カナダの大学生231人を対象にした縦断研究では、楽しみのために本を読むことが、その学年を通じた心理的苦痛の低さと関連していました。研究者は、自分から読みたいと思って読むことが重要だと報告しています。
また、2025年のレビューでは、楽しみとしての読書が、リラックスや日常からの一時的な逃避、自己理解、人とのつながりなどを通じて、ウェルビーイングを支える可能性が示されています。
一方で、読書をすれば誰でも同じように楽になるわけではありません。
本を読むこと自体が苦手な人もいますし、疲れているときに文章を追うことが負担になることもあります。
ですから、
「ストレスがあるなら読書をしなければ」
と無理をする必要はありません。
「6分でストレスが68%減る」は本当?
読書とストレスについて調べると、
「6分読書をすると、ストレスが68%減る」
という数字をよく見かけます。
これは2009年の「Galaxy Stress Research」という報告に由来しています。
ただ、この数字については、今回確認した範囲では査読された学術論文としての一次資料を確認できませんでした。
図書館の調査回答でも、元の研究資料は一般公開されておらず、方法や小規模な対象について批判があることが紹介されています。
そのため、この記事では、
「6分読めば必ず68%ストレスが減る」
とは扱いません。
短い読書でも気分転換になる人はいますが、大切なのは数字よりも、
「自分は本を開くと少し落ち着けるか」
という実感だと思います。
ストレスがある日に試しやすい読書習慣
読書を気分転換として取り入れるなら、頑張りすぎないことが大切です。
5分や10分だけ読む
一章を読み切る必要はありません。
数ページでも十分です。
「今日は10分だけ」と決めると、読書が新しい義務になりにくくなります。
読みやすい本を選ぶ
疲れている日に、難しい本を読む必要はありません。
短いエッセイ。
何度も読んだ小説。
写真の多い本。
短編。
自分が入りやすい本でいいんです。
途中でやめてもいい
読んでいて余計につらくなる本もあります。
今の自分には重すぎる物語もありますよね。
そんなときは、本を閉じて大丈夫です。
読書は我慢して続けるものではありません。
紙か電子書籍かは、自分が落ち着く方でいい
紙の本が好きな人もいれば、文字を大きくできる電子書籍の方が読みやすい人もいます。
どちらがストレス解消に優れているか、と決める必要はありません。
自分が読みやすく、気持ちが楽な方法を選ぶのが一番です。
音声で聴く方が心地いい日なら、オーディオブックでも構いません。
ここではサービスを選ぶことより、無理なく物語や言葉に触れられることを大切にしたいですね。
読書に助けられた私の時間
私自身、本を開くことで、気持ちが少し別の場所へ移るように感じたことがあります。
心が落ち着かなかった時期に読んだのが、ミヒャエル・エンデの『モモ』でした。
物語を読んだから悩みが消えたわけではありません。
でも、ページを追っている間は、頭の中を占めていたことから少し離れることができました。
モモの世界へ入っている時間だけは、急がなくていい。
そんな感覚があったことを覚えています。
私は、読書にはこういう時間もあると思っています。
問題を解決するためではなく、
いったんそこから離れるために読む。
答えを探さず、ただ本の中にいる。
それだけで少し楽になれる夜もあります。
読書だけで無理にストレスを抱え込まない
読書は、気分転換やセルフケアの一つとして楽しむことができます。
でも、強いストレスが長く続いているときや、眠れない、食事がとれない、普段できていることができないなど、生活への影響が大きくなっている場合は、読書だけで何とかしようとする必要はありません。
厚生労働省も、こころや体の不調が続くときには、早めに相談することの大切さを案内しています。公的な相談窓口も用意されています。
読書は医療や専門的な支援の代わりではなく、毎日の中で自分を休ませる方法の一つ、と考えておくとよいでしょう。
まとめ|読書は「少し離れる時間」を作ってくれる
読書がストレス解消につながると感じられる理由には、
- 日常の気がかりから一時的に離れられる
- 一つの物語や言葉に意識を向けられる
- 自分とは違う視点や世界に触れられる
- 自分のペースで静かな時間を持てる
といったことが考えられます。
研究でも、楽しみのための読書と心理的なウェルビーイングとの関連が報告されています。ただし、読書の感じ方や効果には個人差があります。
疲れている日に、無理に一冊読み切る必要はありません。
ほんの数ページでもいい。
読めない日は読まなくてもいい。
「少し本を開いてみようかな」
と思ったときに、自分の好きな本を手に取る。
そのくらいの距離で、本と付き合っていけたら十分だと思います。

