「文学の旅へようこそ」──そんな気持ちで、おすすめの本をそっと手に、大阪万博の会場を歩いてみませんか?
2025年に開催される大阪・関西万博では、さまざまな国のパビリオンが集い、それぞれの文化や未来への思いを届けてくれます。
今回はその中から、ヨーロッパ西部・南部の国々に注目して、パビリオンでの体験と響き合う「海外文学」をご紹介します。
パビリオンで出会う、海外文学と本の魅力

今回のVol.2では、「ヨーロッパ西部・南部」エリアをめぐります。
ご紹介するのは、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、ポルトガル、スイス、ハンガリー、ポーランドの9カ国。
それぞれの国で生まれた物語には、歴史や芸術、日常の風景、そして生き方の違いが色濃く映し出されています。
万博パビリオンでの注目ポイント
「この国に生きる人たちは、どんな景色の中で、どんな想いを抱えているのだろう?」
そんなことを想像しながら歩くパビリオンの時間。
その余韻のまま本を開けば、きっと旅の続きが始まります。
なぜ万博と本をつなぐのか?海外文学が心に響く理由

ヨーロッパ文学には、心の奥に触れるような物語がたくさんあります。
戦争や再生、孤独や希望──それぞれの本が描く世界は、大阪万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」とも静かに呼応してくれるようです。
パビリオンで感じた小さな感動や発見が、本の中であたたかくふくらんでいく。
そんな体験を、ぜひ味わっていただきたいと思います。
大阪万博で読みたい本おすすめ10選|ヨーロッパ西部・南部編
ヨーロッパ西部・南部のパビリオンで感じた空気を、本でやさしく包み直すように味わってみませんか?
ここでは、それぞれの国の魅力と、大阪万博の世界観が重なる海外文学のおすすめ作品を、丁寧に選んでご紹介していきます。
フランス共和国|『失われた時のカフェで』/パトリック・モディアノ
パリのカフェから、大阪万博のパビリオンへ──時と記憶を旅する一冊。
「誰もが心に抱える“消えそうな記憶”──その断片に、カフェの片隅でそっと出会える本があります。」
それが、パトリック・モディアノの『失われた時のカフェで』。
舞台は1960年代のパリ、「ル・コンデ」というカフェ。
美しく謎めいた女性ルタ、彼女に惹かれる青年、探偵、そして新たな恋人……交差する人々の記憶と人生が、静かな筆致で綴られます。
カフェは、ただの社交場ではなく、誰かの存在の証をとどめる“記憶の交差点”なのです。
そしてこの感覚は、大阪万博のパビリオンとも重なります。
国や文化の違いを超えて、多くの人が出会い、思いを交わすパビリオン。ふと腰かけた万博のカフェでも、見知らぬ誰かとの偶然が、かけがえのない記憶として残るかもしれません。
本書は、そんな“一瞬の重なり”に静かに光を当ててくれる海外文学のおすすめ作品。何気ない日常が、実はかけがえのない物語だったと気づかせてくれる一冊です。
人生の記憶や過去に思いを馳せたい方、カフェやパリ、静かな人間ドラマに惹かれる方に。
大阪万博を訪れる方にも、ぜひ手に取っていただきたい本です。
\あなたも一息つきながら、この物語にふれてみませんか?/
そっとページをめくるたび、あなたの“失われた時”が、やさしく蘇るかもしれません。
パトリック・モディアノは1945年生まれのフランスの作家。記憶や歴史をテーマに独自の作風を築き、2014年にはノーベル文学賞を受賞。代表作に『エトワール広場』『暗いブティック通り』『血統書』などがあり、特定の作品ではなく全体の業績が評価されました。
ドイツ連邦共和国|『変身』/ フランツ・カフカ
「なぜ自分だけがこんな目に…?」
そんな疎外感や違和感を抱えたことのある方にこそ、おすすめしたい一冊があります。
フランツ・カフカの代表作『変身』は、平凡なセールスマンである主人公・ザムザが、ある朝突然“巨大な虫”に変わってしまうという衝撃の幕開けから始まります。
家族や社会から次第に疎まれ、孤独の中で静かに自分と向き合う彼の姿は、「異質な存在」としての苦しみと同時に、他者のまなざしの冷たさをリアルに映し出します。
この不条理文学の傑作は、まさに多様性や共生を考える今こそ読みたい海外文学のひとつ。
世界中の価値観が交差する大阪万博のパビリオンと重ね合わせると、“他者をどう理解し、共に在るか”という問いがぐっと身近になります。
違いを恐れるのではなく、まずは受け止めてみる。そんな視点をくれるこの本は、短時間で深い読書体験を得たい方にもぴったりです。
自分の居場所に悩んだときや、社会との距離に戸惑ったとき──
グレゴールの物語が、あなたのこころを少し軽くしてくれるかもしれません。
\あなたの“違和感”は、きっと誰かの共感になります/
まずは数ページ、この小さな名作を覗いてみませんか?
フランツ・カフカ(1883–1924)は、チェコ・プラハ生まれのユダヤ系ドイツ語作家。不条理や疎外感を描いた『変身』などで知られ、死後に評価が高まり、20世紀文学に大きな影響を与えました。
ドイツ連邦共和国|『車輪の下』/ ヘルマン・ヘッセ
期待に押しつぶされそうなあなたへ──ドイツ発のおすすめ海外文学
「期待に応えようと頑張るほど、心が置いてけぼりになっていませんか?」
そんなふうに感じるとき、そっと手渡したくなる本があります。
それが、ドイツの作家ヘルマン・ヘッセによる海外文学『車輪の下』です。
天才少年ハンスが、まわりの期待や学校教育の重圧に苦しみながら、本当の自分を探し続ける姿──それは、今の私たちにもどこか重なるものがあるかもしれません。
2025年の大阪万博では、ドイツを含むさまざまな国のパビリオンが、それぞれの価値観や未来への願いを発信しています。この本が描く“画一的な社会への違和感”は、多様性や創造性をテーマにした万博のメッセージとも静かに響き合うのです。
プレッシャーや不安で心がちょっと疲れてしまったとき、短いながらも深いこの一冊が、そっとあなたを癒してくれるかもしれません。
自分を見つめ直したいときに、ぜひおすすめしたい海外文学のひとつです。
ヘルマン・ヘッセはドイツ生まれの詩人・小説家。神学校を脱走し執筆に専念、『車輪の下』『デミアン』などを発表。1946年に『ガラス玉演戯』でノーベル文学賞を受賞しました。
イタリア共和国|『いいなづけ』/ アレッサンドロ・マンゾーニ
17世紀のイタリア・ミラノを舞台にしたアレッサンドロ・マンゾーニの長編小説『いいなづけ』は、社会の理不尽やペストの流行といった困難の中でも、誠実に愛を貫こうとする若い二人の物語です。
静かに、でも力強く──その姿は、読み手の心にそっと響いてきます。
この作品に込められているのは、どんな時代にも通じる“人間らしさ”への深いまなざし。
大阪万博のパビリオンで出会う「多様性」や「共生」のテーマとも、どこか重なって見えるのではないでしょうか。
世界が揺れ動く今だからこそ、あらためて大切にしたい、人とのつながりや信じる心──。
そんな思いを持つ方に、ぜひおすすめしたい海外文学の一冊です。
大阪万博をきっかけに、本のページをそっとめくりながら、少しだけ“世界”と“自分”に目を向けてみませんか?
アレッサンドロ・マンゾーニ(1785–1873)はイタリアの詩人・小説家で、歴史小説『いいなづけ』の作者。ロマン主義文学を代表し、イタリア統一運動にも影響。晩年は上院議員として国民的尊敬を集めました。
イタリア共和国|『まっぷたつの子爵』/ イタロ・カルヴィーノ
大阪万博で感じる“多様な世界”を、本でじっくり味わってみませんか?
今回おすすめしたい海外文学は、イタロ・カルヴィーノの寓話的な一冊『小さな村』(原題:『まっぷたつの子爵』)です。
この物語は、戦争で真っ二つになった子爵が、善と悪という両極端な人格に分かれて村に戻ってくるところから始まります。
混乱の中で生まれる気づきは、まるで大阪万博のパビリオンが語る“共存”や“多様性”のメッセージと重なるようです。
「私たちも、どこか“半分”のまま生きているのかもしれない」──そんな風に思わせてくれる、やさしくも深い物語。
善悪のはざまにある人間らしさを描きながら、「違い」を認め合う心をそっと育ててくれる一冊です。
大阪万博を訪れたあとの読書としてもぴったりの海外文学、本当におすすめですよ。
イタロ・カルヴィーノ(1923–1985)はキューバ生まれ、イタリア育ちの作家・評論家。『まっぷたつの子爵』『見えない都市』『冬の夜ひとりの旅人が』などの代表作で知られ、幻想文学やメタフィクションを得意とし、オーストリア国家賞や世界幻想文学大賞生涯功労賞も受賞しました。
オランダ王国|『ハリネズミの願い』/トーン・テレヘン
「ひとりが好き。でも、誰かとつながりたい」──そんな想いにそっと寄り添ってくれるのが、トーン・テレヘンの海外文学『ハリネズミの願い』です。
自分の“ハリ”に悩み、ほかの動物とうまく関われない孤独なハリネズミが、勇気を出して皆を家に招こうとする──でも「もし誰かが来たら?」「うまく話せなかったら?」と、不安で手紙を出せないまま悩み続けます。
この繊細な葛藤と、小さな一歩に込められた希望が、大人の心に静かに響きます。
2025年の大阪万博で出会える多様なパビリオンもまた、国や文化の違いを受け入れながら新しいつながりを生む場所。この物語は、大阪万博が掲げる“多様性と共生”というテーマと深くつながっています。
他者との距離に戸惑ったり、自信が持てなかったり──そんなあなたにこそ、おすすめしたい一冊。
「ひとりでも、わかり合える誰かがいる」──そう思える読書体験が、ここにあります。
トーン・テレヘンは1941年オランダ生まれの作家・詩人・医師です。医学を学んだ後ケニアで医療活動に従事し、帰国後は開業医として働きながら創作を開始。1984年に娘のために書いた物語をきっかけに、動物を主人公とした寓話を数多く執筆し、文学賞も多数受賞しています。
オランダ王国|『不快な夕闇』/マリーケ・ルカス・ライネフェルト
“喪失の闇”とともに歩く少女──オランダ発、心に残るおすすめの海外文学
オランダの小さな酪農家に暮らす10歳の少女、ヤス。
あるクリスマスの夜、彼女は思わずこんな祈りを捧げてしまいます──「ウサギの代わりに兄が死にますように」。そしてその願いは、静かに現実となってしまうのです。
厳格な宗教と沈黙に支配された家族の中で、ヤスは自分の感情を閉じ込め、罪悪感と共に日々を生きていきます。
マルーシャ・ルーカス著『不快な夕闇』は、そんな少女の心の奥底を、詩のように繊細な筆致で描いた海外文学。
五感を揺さぶるような描写が胸に残り、2020年にはブッカー国際賞も受賞した、いま読むべき一冊です。
大阪万博のパビリオンで語られる「いのち」や「共感」「多様性」というキーワードは、この物語が伝える“感情の深さ”ともどこか重なります。異なる文化や価値観にふれることで、自分の中にある見えない“闇”とも、そっと向き合えるかもしれません。
家族との距離に悩んでいる方や、心に抱えた想いを誰にも言えずにいる方にこそ、そっと寄り添ってくれる本です。
大阪万博をきっかけに、パビリオンで感じたことを胸に、この海外文学を手に取ってみませんか?あなたの想像力が、静かに広がっていく時間になるかもしれません。
あなたもヤスとともに、“夕闇”を歩いてみませんか?
マリーケ・ルカス・ライネフェルトは1991年生まれのオランダの作家・詩人。厳格なキリスト教家庭で育ち、家族の喪失体験が作品に深く影響しています。デビュー作『不快な夕闇』で2020年に国際ブッカー賞を史上最年少で受賞し、詩的かつ繊細な文体で高く評価されています。
ポルトガル共和国|『不穏の書』/フェルナンド・ペソア
不確かな「私」と向き合う時間に。ペソア『不穏の書』
「私って、いったい誰なんだろう」
そんな風に立ち止まったことがあるあなたへ、おすすめの一冊が『不穏の書』です。
ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアが別名義で綴ったこの海外文学は、日常に潜む孤独や夢と現実のあいだの揺らぎを、詩のような文章で静かに語ります。
どこから読んでも、ふと胸に刺さる一節に出会えるはずです。
大阪万博のパビリオンが描く「多様性」や「共生」のテーマとも響き合う本書。
“私とは何か”を見つめ直す時間が、万博の体験をより深くしてくれるかもしれません。自分に迷いを感じる方や、哲学や詩に惹かれる方に、そっと寄り添う一冊です。
気になるページから、ゆっくりめくってみてくださいね。
フェルナンド・ペソア(1888–1935)はポルトガル出身の詩人・作家。南アフリカで英語教育を受け、英語とポルトガル語で詩作を行いました。「異名者」と呼ばれる架空の作家人格を多数創出し、独自の文学世界を築いたことで知られます。生前の出版は少ないものの、死後に再評価され、国民的詩人とされています。
ポルトガル共和国|『縛り首の丘』/エッサ デ・ケイロース
幻想と現実が静かに溶け合う、裏切りと救いの物語──それが、ポルトガルの海外文学『縛り首の丘』です。
物語の舞台は中世カスティーリャ。
美しい若き騎士が、大切な女性を救うために動き出すところから、物語は始まります。
ある日、彼は処刑場の丘で、不思議な声を耳にします。縛り首にされた男がこう語るのです──「俺を連れていけ。きっと、何かの役に立つ」。
そこから始まるのは、幻想と現実のあわいを旅する、不思議な冒険。やがて騎士は、思いがけない陰謀と女性の仕掛けた罠に巻き込まれていきます。
この本の魅力は、人間の欲望、裏切り、そして救済といった深いテーマを、ユーモアと皮肉を交えながら描き出しているところ。
重厚でいて、どこか軽やか。読むほどに、その奥行きに引き込まれていきます。
もしあなたが、ヨーロッパの海外文学や幻想小説がお好きなら──
この一冊は、きっと心に残る「おすすめの本」になるはずです。
そしてこの作品に込められた“異文化との出会い”や“価値観の揺らぎ”は、大阪万博のパビリオンが私たちに伝えようとしている「多様性」や「未来社会の在り方」とも、不思議と響き合うように思えるのです。
大阪万博をきっかけに、本の中の異世界にもふれてみたい方へ。
『縛り首の丘』は、まだ見ぬ世界への扉を、そっと開いてくれる一冊です。
エッサ・デ・ケイロース(1845–1900)は、ポルトガルの小説家で、写実主義文学の先駆者とされる人物です。法学を学んだ後、弁護士やジャーナリストとして活躍し、各地で外交官も務めました。代表作に『アマーロ神父の罪』『縛り首の丘』などがあります。
スペイン王国|『ドン・キホーテ』/ミゲル・デ・セルバンテス
理想を追いかけ、現実と向き合うすべての人へ。
スペインの古典文学『ドン・キホーテ』は、時代を超えて読み継がれる海外文学の名作です。
騎士道物語に憧れ、自らを遍歴の騎士と名乗った男が、従者サンチョ・パンサとともに旅へ出る姿は、どこか滑稽で、それでいて心を打たれます。
彼の物語には、夢を信じて歩む勇気、現実に打ちのめされながらも立ち上がる力、そして人との絆のあたたかさが描かれています。
そんな“理想を追う姿”は、まさに大阪万博のパビリオンが掲げる「未来社会への挑戦」と重なります。
理想と現実の間で揺れている方、新しい挑戦を始めたい方、友情や人とのつながりを見つめ直したい方、そして大阪万博をきっかけに海外文学にふれてみたい方に、ぜひおすすめしたい一冊です。
あなたも、この物語にそっと背中を押されてみませんか?
ミゲル・デ・セルバンテス(1547〜1616)は、『ドン・キホーテ』の著者として知られるスペインの小説家・劇作家です。戦争で左手の自由を失い、海賊に囚われた過去を持つなど波乱の人生を送りました。晩年に作家として成功し、スペイン文学史上最も重要な人物とされています。
大阪万博パビリオン×海外文学でおすすめの本を楽しむ
万博で心躍った物語を、すぐに手軽に楽しみたい方へ︕Kindle UnlimitedやAudibleの活用法をわかりやすくご案内します。
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まとめ
大阪万博のパビリオンで感じた国々の空気を、本というもうひとつの形で味わってみませんか?
ヨーロッパ西部・南部の海外文学は、多彩な人生のかたちを映し出してくれます。世界のある一部を知ることで、一冊の本にこんなにも広い景色があったんだなと気づくはず。
本の中で出会う“もうひとつの世界”、ぜひ体験してみてくださいね。
▶大阪万博2025のテーマ「いのち輝く未来社会」の魅力をさらに感じるために、近未来SF小説を読んでみませんか?詳しくは、こちらの「大阪万博2025のテーマと場所から考える|近未来SF小説おすすめ8選【いのち輝く未来社会とは】」をご覧ください。
▶また、万博で触れた多様な文化を、ヨーロッパ各地の文学を通じて深めてみましょう。以下のリンクから、それぞれの地域の名作をご紹介しています:
* 「大阪万博で読みたい本おすすめ10選【ヨーロッパ中部・北欧編:パビリオン×海外文学】|Vol.1」