高野聖の女の正体は?あらすじと外科室など泉鏡花の代表作品もでは、泉鏡花の名作『高野聖』に登場する謎めいた女性の正体に迫ります。
高野聖の女の正体というのがわかりにくく、謎めいているので、読後もずっと女のことが残りませんか?
さらに、高野聖のあらすじをわかりやすく紹介し、泉鏡花の代表作『外科室』なども取り上げて、彼の独特な文学世界をご紹介していきます。
泉鏡花ファンはもちろん、初めて泉鏡花の作品に触れる方にも親しみやすい記事となっています。
高野聖の女の正体は?あらすじと外科室など泉鏡花の代表作品も
- 泉鏡花は、あまり知られていない「天才」作家です。
- 彼の作品は、幻想的で華やかな文体が特徴です。
- 代表作「高野聖」を含む300篇以上の小説や戯曲を書いています。
- 今も熱心なファンがいますが、国語の教科書にはあまり載っておらず、知名度はそれほど高くありません。
- 泉鏡花の作品は、現実と非現実が混ざった独特の幻想的な世界を描いています。
- 江戸時代の文芸から影響を受けつつも、鏡花自身のロマンティックな要素が加わり、読者を別の世界へと誘います。
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泉鏡花の高野聖
泉鏡花高野聖の主な登場人物
現在の場面と回想の場面に分かれています。それぞれの登場人物をご紹介します。
現在の場面(冬)
私(若者):若狭へ帰る途中、名古屋で買った五目寿司の駅弁の味に驚き、思わず叫んでしまいます。同じ弁当を買った旅僧がその様子を見て笑い、二人は旅を共にすることに。敦賀の宿で旅僧から不思議な話を聞きます。
旅僧(宗朝):45〜46歳の高野山に所属する僧侶で、六明寺の大和尚
香取屋の夫婦:敦賀の宿の夫婦で、旅僧と顔なじみ
回想の場面(夏)
宗朝:(当時)20歳くらいの修行僧で、飛騨の山を越える途中で不思議な出来事に遭遇します。
麓の茶店の女:小流の水が井戸水か川水かを宗朝が尋ねた茶店の女。
富山の薬売り: 若い男。茶屋で宗朝と出会います。ねじ曲がった性格で人を見下し、浴衣に変わると酒を飲みながら旅館の女に迷惑をかける下品な人物
百姓:二股道で、宗朝に松本への道を教えてくれる親切な百姓。旧道には行かないようにと助言します。
女:29〜30歳くらいで、小柄で美しい色気のある女性。元は医者の娘で、不思議な力があり、16歳から患者を治していました。また、13年前の洪水で村が全滅し、唯一生き残ったのは女と、患者だった障害のある少年・次郎だけです。
障害のある少年(次郎):24歳で太っており、女の亭主。元は女の実家で治療を受けていた患者で、看病していた女に心を寄せ、退院後に家まで送ってもらいました。洪水で村が壊滅し、女と次郎、女の付き人の親仁だけが生き残る。
親仁: 馬引きの男で、女の家の留守番をしています。馬市に馬を売りに行くことがあります。元は女の実家の医者の使用人で、女を「お嬢様」と呼んでいます。
泉鏡花高野聖のあらすじ
ある日、「私」は若狭への帰省の旅で、中年の旅僧と出会いました。その旅僧は越前から永平寺に向かう途中でした。敦賀で一泊する予定で、「私」はその旅僧と一緒に行くことにしました。
敦賀の宿で一緒に泊まった「私」は、夜、旅僧から不思議な話を聞きました。
旅僧が若い頃に体験した不思議な話はこうです。
彼は信州・松本へ向かうために飛騨の山を越えていたとき、先に進んでいた富山の薬売りの男が、危ない古い道を選んで進んでしまったため、これを追った。
怖い蛇やヒルが降る森を通り抜け、馬の鳴き声を頼りに、妖しい美女の家にたどり着いたのです。
その家には、女の夫とされる障害のある太った少年も住んでいた。また、親仁という馬引きのオヤジもいました。親仁は、かつて女の実家の医者の使用人だったので、女を「お嬢様」と呼んでいました。
宗朝は、傷だらけの体を女に川で洗ってもらいました。すると、女はいつの間にか全裸になっていました。
猿やこうもりが女にまとわりつく中、家に戻ると留守番をしていた馬引きの親仁が、宗朝を不思議そうに見ています。
翌朝、女の家を出た宗朝は、里に向かいながらも美しい女のことが忘れられず、僧侶の身を捨てて彼女と一緒に暮らすことを考えながら、引き返そうとしていました。
するとそこで、馬を売りに行った帰りの親仁と出会い、女の秘密を知らされます。
親仁が昨日売ってきた馬は、実は女の不思議な力で馬の姿に変えられた、富山の薬売りの男でした。
女には、男性たちに息を吹きかけると、その人たちが動物のような姿に変身する、という不思議な力があると言われています。宗朝はその話を聞くと、驚きと恐怖で魂が体に戻り、すぐに里へと急いで下りて行きました。
泉鏡花高野聖の女の正体は?
以上のことから、
泉鏡花は高野聖に登場する女妖怪のアイデアを、中国の小説『三娘子』から得た、とも言われていますので、正体は女妖怪であると考えられます。
まず、美しいとなれば魅入られる男性もたくさん居ると思いますし、医者の娘ということなので、元は人間だった可能性があります。しかし、病人の看護をしているうちに何らかの自然の力が加わったことで、「女」はこれまで病人を治癒することができたのです。
同時に障害のある少年も、その不思議な力に引き寄せられたうちの一人であるだろうし、障害のある少年だからこそ「女」は安心して一緒にいられるのかも知れません。
すでに人間ではなくなり、不思議な力をもつ「女性」という役割で「女」として登場している。
また、泉鏡花の特徴は、奇妙で幻想的な世界を創り出すことですから、それらを踏まえたうえで高野聖の「女妖怪」の役割はとても重要だと感じます。
外科室などの泉鏡花の代表作
泉鏡花の『外科室』など一部の代表作をご紹介します。
義血侠血
滝の白糸という美しい女性は、金沢で有名な水芸の達人でした。彼女は法律を学びたいという夢を持つ欣弥という若者と出会い、東京での学費を援助することに決めます。白糸は欣弥と一緒に人生を歩みたいと願い、必死に働くのです。
しかし、ある夜、必死に働いて貯めた学費を盗賊に奪われてしまいます。この事件を、後に検事となる欣弥が裁くという、鏡花の初期の観念小説を代表する物語となりました。
(泉鏡花 1894刊行)
夜行巡査
八田義延は、職場では冷たくて感情がない警察官ですが、私生活では姪と深い愛情で結ばれています。しかし、彼の恋人である姪に対して、彼女の叔父が邪魔をしているため、幸せにすることができません。
物語の前半と後半で、八田の態度が劇的に変化する様子が描かれ、前半の八田がどのように行動するかを予感させる悲しい結末が待っています。(泉鏡花 1895刊行)
照葉狂言
この物語は少年時代と青年時代に分かれています。
少年時代、主人公の貢は年上の美しい女性・お雪に憧れていましたが、女座頭の小親に育てられます。
8年後、立派な能役者となった貢が故郷に帰ると、お雪の継母が原因で三人の関係が悪化していることを知り、悲しみに暮れながら行方不明の旅に出ます。
物語は、運命の変わりやすさや歪んだ美の感覚を描いており、貢と小親の未来への深い悲しみが表現されています。(泉鏡花 1896刊行)
外科室
学生と少女が一度目を合わせて恋に落ち、歳月を経て外科医師と患者として手術室で再会する話。これは複雑なストーリーをすっきりまとめている泉鏡花の技術でもあります。
鏡花の言葉遣いに慣れるとその魅力がわかりますが、時代背景や恋愛観が現代とは違うため、少し難しいかもしれません。
それでも、時代の違いや深い感情を感じられる良作です。(泉鏡花 1895刊行)
婦系図
難しい言葉や独特の文体が多いので、少し読みにくいです。この物語では、主人公の主税が、恩を受けた酒井家のために敵の河野家と戦うという内容ですが、それだけ見ると普通の話に見えるのですが、泉鏡花の巧みな技術で特別な作品になっています。
また、この作品には鏡花自身の経験も反映されています。(泉鏡花 1907刊行)
歌行燈
月の光が照らす桑名の街の夜が舞台です。
”旅芸人が酒を飲みながら話し始める”と、近くの宿では”二人の老人が悲しい芸妓の話を聞いて”いる。この物語は複雑で、男の過去の秘密や、女郎お三重の悲しい話が絡んでいます。同時進行のこの状態は、二つの話が交わってだんだんと新しい世界が見えてきます。
(泉鏡花 1910刊行)
天守物語
この物語は、現実と幻想が交錯して、妖怪が登場する、という神話のような世界が作り上げられています。
人間と妖怪の対立や、倫理的な試練に立ち向かう選ばれた人間を描くことで、心が清められるような作品となっていて、物語の景色がとてもリアルで丁寧に描かれているので、読んでいると泉鏡花の世界に引きずり込まれています。(泉鏡花 1917刊行)
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まとめ
高野聖の女の正体は?あらすじと外科室など泉鏡花の代表作品もについて、以下の5つの事柄をご紹介しました。
泉鏡花の「高野聖」は、彼の幻想的な文学世界を存分に味わえる作品で、現実と夢の境界が曖昧な不思議な世界が広がっており、泉鏡花ならではの華やかな文体と独特の雰囲気が、わたしたちを魅了しますよね。
もしまだ「高野聖」を読んでいないなら、ぜひ一度手に取ってみてください。
鏡花の幻想的な世界が、みなさんを別の時空へと誘ってくれることだと思います。
未体験の物語を体験して、楽しんでくださいね!