こんにちは、松風知里です。
今回は、直木賞候補作でも話題の小説家・芦沢央(あしざわ・よう)さんについてお届けします。
「どんな人なんだろう?」「結婚してるの?」「どんな経歴を経て作家になったの?」そんなふうに思われたこと、ありませんか?
この記事では、芦沢央さんのプロフィールから作家としての歩み、代表作までを、やさしく丁寧にご紹介していきますね。
最新作『嘘と隣人』については別記事で詳しくご紹介しますので、まずは人物像から一緒にのぞいてみましょう。
芦沢央ってどんな人?

図書館で1000冊を読む少女”が、やがてベストセラー作家へ──。
芦沢央さんの原点は、驚くほど本に囲まれた青春時代にありました。
芦沢央さんは1984年、東京都の生まれで、現在は神奈川県川崎市にお住まいです。
中高生の頃は、毎日のように図書館に通って、まるで本と暮らすような日々を送っていたそうです。
通学の電車の中でも本を開き、あまりに物語に夢中になってしまって、駅に着いても本から目が離せず…そのまま図書館へ向かってしまうこともあったとか。
多い年には、なんと1000冊以上も読んでいたそうですよ。
本を買う余裕がなかった分、図書館をフル活用していたというお話にも、共感される方が多いのではないでしょうか。
そんな“読書の蓄積”が、今の作家としての土台を支えているのだと、芦沢央さんご本人も語っていらっしゃいます。
芦沢央は結婚してる?家族構成は?
「結婚してるのかな?」「子育てしながら執筆しているの?」──そんなふうに思われる方も多いかもしれません。
芦沢央さんは、公式プロフィールなどでご家族について多くは語られていません。
ただ、2017年のインタビュー記事では「2児の母」と紹介されていて、その時点ですでにお子さんがいらっしゃることが分かっています。
また、エッセイなどの中に「夫婦でジグソーパズルをする」といったエピソードが登場することもあるのですが、それが実際の出来事なのか、物語の要素なのかは明かされていないんですよね。
ただ一つ言えるのは、家族との日常を大切にしながら、それでも書くことを続けている──そんな芦沢さんの姿が、多くの人に励ましを与えているということなんです。
芦沢央12年間の挑戦と転機|出版社から作家へ

いくつもの文学賞に挑み続け、諦めきれなかった「物語を書くこと」
その情熱が、ある日、扉を開きました。
芦沢央さんは千葉大学文学部史学科を卒業後、出版社で編集者として働かれていました。
学生時代から創作活動に熱心で、同人誌を作ったり、似鳥鶏さんといった仲間ともつながっていたそうです。
でも、小説家になるまでの道のりは決して平坦ではなくて…。
高校生の頃から、実に12年間も文学賞に挑戦し続けていたのだとか。
何度も最終選考までは残るのに、なかなか賞には届かない──そんなくやしさを抱えながらも、「それでも物語を書きたい」と、本に関わる仕事を選んだんですね。
編集者としては年間400冊以上のビジネス書や自己啓発書を読み、仕事の目で本と向き合う日々。
その経験が、作品づくりにも深く影響しているように感じます。
そして2012年、『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞し、夢だった作家としての第一歩を踏み出したのです。
芦沢央ペンネームの由来と、憧れの作家たち

名前のひとつひとつにも、本への愛が込められていました。
芦沢央さんのペンネームには、大好きな作品への想いがこめられているんです。
名字の「芦沢」は、辻村深月さんの『凍りのくじら』の主人公・芦沢理帆子からいただいたもの。
そして下の名前「央(よう)」は、小野不由美さんの『十二国記』に登場する「陽子」にちなんで名付けられたそう。
「子」を取って、少し中性的な響きにしたかったのだとか。
さらに、「憧れの作家」としてスティーヴン・キングの名前も挙げられています。でもそれは、“自分が尊敬する作家たちが憧れている存在”だったから。
そんなふうに、物語の世代を超えてつながるような感覚に、私はちょっと感動してしまいました。
芦沢央の代表作品
ミステリーと心理の狭間で揺れる、静かな衝撃──。
芦沢作品の世界観を味わえる代表作をピックアップしてご紹介します。
読者からの評価が高く、書店でもロングセラーとなっている芦沢央さんの作品をいくつかご紹介しますね。
許されようとは思いません
家族の闇と光を、あなたはどこまで受け止められますか?
芦沢央さんの『許されようとは思いません』は、5つの短編からなる心理ミステリー集。
それぞれに描かれるのは、親子や夫婦、家族の中に潜む“許されない感情”や“見て見ぬふりをしてきた過去”。
けれど読み終えたあとには、なぜか心がふっと軽くなるような、不思議な救いもあるんです。
人間の弱さと、それでも誰かを思う気持ち──そんな矛盾をまるごと抱きしめるような物語。
「自分にもこんな気持ち、あったかもしれない」そう感じたあなたへ。
この本が、そっとあなたの心に寄り添ってくれますように。
まずは1ページ、めくってみませんか?
悪いものが、来ませんように
「誰にでも隠された依存と、消えない祈りがある」──そんな言葉が、心にふっと重なった方へ。
『悪いものが、来ませんように』は、不妊に悩む紗英と、子育てに疲れた奈津子という二人の女性の心の深いところを描いた物語です。
依存し合う彼女たちの関係は、ある事件をきっかけに崩れていきます。
日常にひそむ感情のゆらぎ、ふとした祈りや不安。
そうしたものが、茨城の町で静かに交錯していくんです。
読後には、きっと自分や周囲の人間関係をそっと見つめ直したくなるはず。
あなたも、紗英と奈津子の世界に触れてみませんか?
心の奥の声に気づかせてくれる一冊です。
火のないところに煙は
日常の風景の中に、ふと忍び寄る“得体の知れないもの”──そんな不安を感じたこと、ありませんか?
『火のないところに煙は』は、作家・芦沢央さん自身が怪談を依頼されるところから始まる、ドキュメンタリー風の連作短編集。
フィクションと現実の境界があいまいになっていく構成に、読者からは「本当にあった話みたい」と高い評価が寄せられています。
伏線の回収も見事で、読み終えたあとにじわじわと残る“余韻のある恐怖”が、この作品の魅力なんですよね。
もしあなたが、日常のすぐそばにある「静かな怖さ」に触れてみたいと思ったなら──ぜひ、この物語をのぞいてみてくださいね。
汚れた手をそこで拭かない
「ちょっとした嘘やごまかしが、いつの間にか取り返しのつかないことになる──」そんな経験、心の片隅に覚えがありませんか?
芦沢央さんの『汚れた手をそこで拭かない』は、日常のささいな秘密や後悔を描いた短編集。
家庭や職場といった身近な舞台で、「誰にでも起こりうるズレ」が、じわじわと恐ろしさを増していくんです。
心理描写がとても巧みで、まるで自分の心の奥を覗かれているような感覚になることも。
もし今、嘘や隠しごとに胸を痛めているなら、この本がそっとあなたに問いかけてくれるはずです。
──正直であることの大切さを、もう一度思い出したいときに。
罪の余白
娘を失った父親が向き合うのは、深い喪失感と、残された“真実”。
芦沢央さんの『罪の余白』は、いじめ・スクールカーストという現代社会の歪みに鋭く切り込みながら、親子の絆や感情の揺れを丁寧に描いた心理サスペンスです。
読み進めるうちに、「許しとは? 正義とは?」と、自分の心にも問いかけたくなるはず。
繊細な心理描写と、息詰まるような心理戦──きっとあなたの中の“何か”が静かに揺さぶられます。
一度、この物語を通して、心の奥にある想いや痛みにそっと向き合ってみませんか?
これらの作品には共通して、“人の心の奥にあるゆらぎ”や“誰にも言えない思い”が丁寧に描かれています。
ただの犯人探しではなく、「人はなぜ、嘘をつくのか」「どこまでが善で、どこからが罪なのか」──そんな問いが、ふと自分自身にも返ってくるような物語たちなんです。
最新作『嘘と隣人』については別記事でご紹介しています
📖 【関連記事】 直木賞候補の話題作『嘘と隣人』のあらすじと読みどころをくわしく見る また、今回の『嘘と隣人』がノミネートされた「第173回直木賞・芥川賞」の全候補作が気になる方は、こちらの記事もどうぞ。
まとめ|本と共に生きる人、その軌跡
芦沢央さんの人生には、いつも本が寄り添っていたんですね。
読むこと、書くこと、誰かに届けること──そのひとつひとつを大切に積み重ねてきた歩みが、今の作品につながっているように思います。
もし、まだ芦沢さんの作品に触れたことがない方がいたら。
心をふっと静かに揺らしてくれる一冊を、ぜひ手にとってみてください。
そして、最新作『嘘と隣人』のことが気になる方は、ぜひ次の記事へどうぞ▶ 芦沢央の直木賞候補作『嘘と隣人』を詳しく読む