こんにちは。松風知里です。
町屋良平さんの小説を読んでいると、ときどき「この気持ちを、こんな言葉で書けるんだ」と立ち止まりたくなることがあります。
青春、恋愛、身体、暴力、創作、家族。
扱うものは作品によって違いますが、その奥にはいつも、うまく言葉にできない気持ちを抱えながら生きる人がいるんですよね。
町屋良平さんは、『1R1分34秒』で芥川賞、『ほんのこども』で野間文芸新人賞、『私の批評』で川端康成文学賞、『生きる演技』で織田作之助賞を受賞しています。さらに2025年には、『私の小説』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しました。
この記事では、初めて読む方にもおすすめしたい7冊と、最新刊『生活』、これまでの主な受賞歴をご紹介します。
「町屋良平さんを読んでみたいけれど、どこから始めよう?」
そんなときの一冊選びに、役立ててもらえたらうれしいです。
この記事でわかること
- 町屋良平さんはどんな作家?
- 町屋良平さんのおすすめ本7選
- 初めて読むならどの作品がおすすめ?
- 最新刊『生活』について
- 町屋良平さんの主な受賞歴
※2026年9月16日時点の情報です。
町屋良平とはどんな作家?

若者の身体や感情、言葉にならない葛藤を、独特のリズムを持つ文章で描いてきた作家です。
町屋良平さんは1983年、東京生まれ。
2016年、「青が破れる」で第53回文藝賞を受賞してデビューしました。
2019年には『1R1分34秒』で第160回芥川龍之介賞、2022年には『ほんのこども』で第44回野間文芸新人賞を受賞しています。
町屋さんの小説には、きれいに説明できない感情がたくさん出てきます。
人が好きなのにうまく近づけない。
自分を変えたいのに、どう変わればいいのか分からない。
何かになりたいけれど、自分が何者なのかもよく分からない。
そんな曖昧なところを、簡単な答えにせず小説として残してくれる。
そこが、町屋良平さんの作品のおもしろさだと思います。
町屋良平おすすめ本7選
芥川賞受賞作から青春小説、私小説、最新作まで、町屋良平さんの幅広さを感じられる7冊を選びました。
1.『1R1分34秒』|初めて読むならこの一冊
町屋良平さんを初めて読むなら、まずおすすめしたいのが『1R1分34秒』です。
主人公は21歳のプロボクサー。
デビュー戦を初回KOで飾ったものの、その後は3敗1分け。
勝てない日々が続き、自分がなぜボクシングをしているのかさえ分からなくなっていきます。
そこへ現れるのが、新しいトレーナー・ウメキチです。
ボクシング小説ではありますが、描かれているのは「強い人」の物語というより、弱さを抱えたままどう生きるのかということ。
身体を動かしながら、頭ではずっと考え続けている主人公が、とても町屋作品らしいんですよね。
2019年、第160回芥川龍之介賞を受賞。現在は新潮文庫でも読めます。
こんな方におすすめ
- 芥川賞受賞作から読みたい
- 青春小説が好き
- スポーツを通して人間を描く小説を読みたい
2.『しき』|16歳の揺れる心を読みたい方へ
主人公は高校2年生。
友人、恋、ダンス、将来への焦り。
まだ何者にもなっていない16歳の時間が、春夏秋冬を通して描かれます。
河出書房新社は本作を、「恋」「努力」「友情」を描く青春小説として紹介しています。
高校生の物語ではありますが、大人になってから読むと、
「あの頃、自分もこんなふうに何かを持て余していたな」
と、不意に昔の感覚が戻ってくることがあるんですよね。
青春小説が好きな方には、ぜひ読んでほしい一冊です。
3.『青が破れる』|町屋良平の原点を知りたい方へ
『青が破れる』は、町屋良平さんのデビュー作です。
身近な人々の死を経験する若者たちを描き、第53回文藝賞を受賞しました。
若さというと、希望に満ちた時期のように語られることがあります。
でも実際には、不安だったり、孤独だったり、人との距離がうまく取れなかったり。
そういう危うさもありますよね。
『青が破れる』には、後の町屋作品へつながっていく「若者の身体」と「言葉にならない感情」がすでにあります。
作家の原点から読んでみたい方におすすめです。
4.『ほんのこども』|暴力と身体を描く小説を読みたい方へ
『ほんのこども』は、第44回野間文芸新人賞受賞作です。
作家である語り手が、かつての同級生「あべくん」の人生を小説にしようとするところから物語が広がっていきます。
誰かの人生を「書く」こと。
他人の痛みを物語にすること。
そこには、簡単に善悪だけでは割り切れない怖さがあります。
町屋さんの作品の中でも、かなり強い読書体験になる一冊だと思います。
2025年9月には講談社文庫版も刊行され、以前より手に取りやすくなりました。
5.『生きる演技』|家族・友情・戦争を描く長編
『生きる演技』は、元「天才」子役と「炎上系」俳優という、高校1年生の二人を中心に描いた長編小説です。
二人は文化祭で、戦争の惨劇を題材にした舞台へ向き合います。
「演技する」と聞くと、誰かのふりをすることを思い浮かべます。
でも私たちは普段の生活でも、家族の前、友人の前、仕事の場などで、少しずつ違う自分を演じているのかもしれません。
では、本当の自分とは何なのか。
そもそも「本当の自分」なんてあるのか。
そんなことまで考えさせられる作品です。
2024年、第41回織田作之助賞を受賞しました。▶ 織田作之助賞についてはこちら
6.『私の小説』|「書くこと」を考えたい方へ
小説を書くとは、どういうことなのか。
「私」を小説に書くとき、それはどこまで本当の自分なのか。
『私の小説』は、そんな問いに向き合った連作集です。
収録作「私の批評」は第48回川端康成文学賞を受賞。さらに本書は2025年、第75回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しました。
町屋良平さんの作品を何冊か読んだあとに手に取ると、
「この作家は、こんなふうに自分の小説そのものを考えているんだ」
と、また違ったおもしろさが見えてきます。
創作をしている方にも気になる一冊ではないでしょうか。
2025年8月には河出文庫版も刊行されています。
7.『生活』|現在の町屋良平を読みたい方へ
2026年9月現在、町屋良平さんの単著の最新刊は、2025年5月29日発売の『生活』です。
主人公・椿は20歳。
父と暮らし、ファミリーレストランで働き、服を買い、恋をし、人と別れ、また誰かと出会っていきます。
大事件ばかりが起きるわけではありません。
でも、誰かと食べること、服を着ること、働くこと、恋をすること。
そんな一つひとつが積み重なって「生活」になっているんですよね。
町屋良平さんがこれまで描いてきた「身体」や「生きること」が、また新しい形で現れた作品だと思います。
最新作から町屋良平さんを読んでみたい方は、こちらから始めてみてもいいですね。
初めて町屋良平を読むならどれがおすすめ?
迷ったら、私はまず『1R1分34秒』をおすすめします。
比較的短く、物語へ入りやすいうえに、町屋良平さんらしい「身体」「若者」「言葉」「自分をうまく扱えない感覚」が詰まっているからです。
青春小説なら『しき』。
少し重くても文学的な刺激を求めるなら『ほんのこども』。
創作や私小説に興味があるなら『私の小説』。
そして今の町屋良平さんを読みたいなら『生活』。
その日の気分から選んでみるのがいいと思います。
町屋良平の主な受賞歴
町屋良平さんは、デビュー以降、さまざまな文学賞を受賞しています。
- 2016年「青が破れる」― 第53回文藝賞
- 2019年『1R1分34秒』― 第160回芥川龍之介賞
- 2022年『ほんのこども』― 第44回野間文芸新人賞
- 2024年「私の批評」― 第48回川端康成文学賞
- 2024年『生きる演技』― 第41回織田作之助賞
- 2025年『私の小説』― 第75回芸術選奨文部科学大臣賞
新潮社の現在の著者プロフィールでも、この流れが紹介されています。
受賞作を順番に追ってみると、町屋良平さんが同じ作風を繰り返すのではなく、少しずつ小説の形を変えていることも感じられます。
町屋良平の本をKindleで楽しむなら
電子書籍は、「読みたい」と思ったときにすぐ始められるのが便利ですよね。
町屋良平さんの作品にも電子書籍版が用意されているものがあります。
ただし、Kindle Unlimitedなどの対象作品は時期によって変わります。
利用するときにAmazonで最新の対象状況を確認してみてくださいね。▶ Kindle Unlimitedの使い方はこちら
町屋良平の2026年の新刊情報
単著の最新刊は『生活』ですが、2026年9月24日発売予定のエッセイアンソロジー『身体を記す』にも、町屋良平さんが参加しています。
15人の作家・表現者が、それぞれ自分の「身体」をめぐる記憶や経験について綴る一冊です。
町屋良平さんの小説を読んできた方なら、「身体」というテーマは気になるところですよね。
小説とは少し違う文章も読んでみたい方は、チェックしてみてもよさそうです。
まとめ|町屋良平は『1R1分34秒』から読むのがおすすめ
町屋良平さんの小説には、分かりやすい答えが用意されていないことがあります。
でも、それがいいんですよね。
人の気持ちは本来、簡単に「こういうこと」と説明できるものではないからです。
今回ご紹介したのは、
- 『1R1分34秒』
- 『しき』
- 『青が破れる』
- 『ほんのこども』
- 『生きる演技』
- 『私の小説』
- 『生活』
の7冊です。
初めてなら『1R1分34秒』から。
そこから文章のリズムや人物の感覚が気になったら、ほかの作品へ少しずつ進んでみてください。
一冊ごとに、少しずつ違う町屋良平さんの小説に出会えると思います。

